こんにちは。masato(@masatoiphone1)です。
日本の8月度消費者物価指数が2.8%、消費税増税の影響をのぞいて30年ぶりの記録、というニュースが入ってきました。
今回は、消費者物価指数とは何か、なぜ物価が上昇しているのか、解説します。
1. 消費者物価指数とは

我々が消費をする、すなわち買物をすると言っても、人によって買うものは異なります。
野菜が好きな人は野菜を多く買うでしょうし、肉が好きな人は肉を買う割合が大きいでしょう。
映画を見るのが好きな人は映画代を多く払い、車を日常的に運転する人はガソリン代の支出が多くなります。
こうした人それぞれの買物のしかたをできるだけ平均化して、物価の動きを数値化したものが「消費者物価指数」です。
消費者物価指数はCPI(シーピーアイ、Consumer Price Index)と呼ばれることもあります。
消費者物価指数を表す際には、「前年比(一年前から)何%上昇したか、下落したか」で表されることが一般的です。
2. 消費者物価指数は「小売価格」を計測している
消費者物価指数は商品の価格を元に算出されますが、具体的には「小売価格」を計測して算出されます。
私たちが普段コンビニやスーパーで買い物をするときの価格は、小売店(コンビニ、スーパーなどは総称して小売店とよびます)で購入する際の価格ですので、「小売価格」と呼んでいます。
消費者物価指数には、食料品、衣料品、電気製品、化粧品などの「モノ」の小売価格に加えて、家賃、通信料、授業料、理髪料などのような「サービス」の小売価格の動きも含まれます。
商品の価格には小売価格以外にもいくつか種類があります。生産者が出荷するときの価格を「生産者価格」、卸売業者が小売店に販売するときの価格を「卸売価格」などと呼びますが、こうした事業者間(企業どうし)の取引における物価指数を「企業物価指数(CGPI)」「企業向けサービス価格指数(SPPI)」と呼び、消費者物価指数とは区別しています。

3. インフレーション、デフレーションとは何か

これからはインフレ、デフレというワードが頻出するので定義を見ておきましょう。
インフレーション(英:inflation)は、継続的に消費者物価指数が上昇することを指しています。インフレとも略されます。
デフレーション(英:deflation)は、継続的に消費者物価指数が下落することを指しています。デフレとも略されます。
4. 消費者物価指数は何に使われるのか
①政府の経済政策
消費者物価指数は、政府による経済政策遂行にあたり重要な指標となります。
消費者物価指数の変動は、経済の体温を表しているからです。
景気が良くなり、国民の給料が上がってより多くのモノ・サービスを購入しようとすると、供給量に対して需要が大きくなるため、モノ・サービスの値段が上がります。
逆に、景気が悪化して国民の給料が下がると、節約思考になってモノ・サービスの供給量に対して需要が小さくなるため、モノ・サービスの値段が下がります。
このように、物価は国の景気動向を判断する上で非常に有用性が高いことから、政府の経済政策を決定する際の重要な指標として使用されています。
②日本銀行の金融政策
日本銀行は、「物価の安定を図ること」を通して健全な経済発展に貢献することを使命としています。
しかしながら、日本はバブル崩壊後の1998年から現在に至るまで長期的な経済停滞とデフレーションから抜け出せていません。
デフレから脱却し持続的な経済成長を実現するため、日本銀行は2013年以降「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、実現のためさまざまな金融政策を実施しています。
③家計・企業の投資行動
物価の変動は私たち一人一人の行動にも大きく影響を及ぼします。それは、貯蓄や消費の行動にも影響します。
いま、手元に100円持っていたとしましょう。
インフレーションが起こっている場合、1年後にはモノの値段が上がってしまいます。いま100円で売っているジュースが、1年後には110円になっているかもしれないため、今すぐ買わないと消費できる量が減ってしまいます。
したがって、インフレは人々の消費行動を速める効果があります。
一方でデフレーションは逆の効果をもたらします。
デフレでは、1年後のモノの値段が下がっているので、いま100円で売っているジュースが1年後には90円になっているかもしれません。
すると、後でジュースを購入した方がより多くジュースを消費できることになります。
したがって、デフレは人々の消費行動を遅らせる効果があります。
いまはジュースの例を紹介しましたが、もっと金額の大きいマンションや一軒家などで考えてみましょう。
将来マンション価格が下落すると予想される場合、マンションの買い控えが発生すると考えられます。
物価変動によって何千万円という単位の投資行動が変わってしまうのです。同じことは企業活動にも当てはまります。
このように、インフレ、デフレが経済に与える影響は甚大なものとなるのです。
5. インフレでは、現金の価値が減っていく
先ほどお話しした通り、インフレではモノ・サービスの値段が上がります。
同じ100円でも、1年後の100円で買えるモノの量が、今現在の100円で買えるモノの量よりも少なくなります。
例を使って考えましょう。
インフレ率が10%の場合、今100円で買えていたジュースが、将来110円になります。
同じ100円玉を持っていても、1年後の世界ではジュースが買えなくなってしまうわけです。
従って、インフレでは現金の価値が減っていきます。
一方、デフレでは現金の価値が上がっていきます。
モノ・サービスの値段が継続的に下がるので、現金を保有していれば勝手に資産価値が上昇していくのです。
6. なぜデフレは悪いのか
人々が消費行動を後回しにしてしまうからです。
先述の通り、デフレ下ではモノ・サービスの価値が継続的に下がるため、いま買わずとも購入を後回しすればより多くのモノ・サービスを購入できるようになります。
一見、合理的とも思えるこの行動がなぜ悪いのでしょうか。
消費行動の後回しは、現在の景気をより悪化させることにつながるためです。
人々が買い控えをすると、さらにモノ・サービスの需要が減って供給量を下回る。
供給量は簡単には減らせないので、企業はさらにモノ・サービスの値段を下げる。
そして人々は消費行動をさらに後回しにする・・・。
結果的には、経済の血液とも言えるカネが世の中を回らなくなってしまい、深刻な不況に見舞われてしまうのです。
こうしたデフレの悪循環を「デフレスパイラル」と呼びます。
90年代以降の日本経済はこの状況から抜け出せず苦しんでいます。
7. 悪いインフレとは何か
では、昨今聞かれる悪いインフレとは何なのでしょうか。
それは、「賃金の上昇を伴わない物価上昇」を指します。
良いインフレとは、賃金が上昇し、人々がより多くのモノ・サービスを購入しようとすることで、需要が供給を上回ることにより起こるインフレです。
一方で、悪いインフレとは、賃金は上昇しないまま、他の要因によってモノ・サービスの価格が上昇することです。
2022年に入り、日本では悪いインフレが発生しています。
足元の物価上昇率は2%を超えている一方で、賃金は物価の上昇に見合うほど増えていません。
厚生労働省が発表している毎月勤労統計調査における実質賃金の推移から確認することが可能です。
8. 悪いインフレの要因
①円安
悪いインフレの要因の一つは円安です。
円安になると、日本で生産できないモノを海外から輸入する際の金額が大きくなってしまうためです。
日本は石油や石炭といったエネルギーの乏しく、大部分を海外からの輸入に頼っているため、円安はエネルギー価格上昇に特に大きな影響をもたらしています。
②中国のゼロコロナ政策
中国のゼロコロナ政策が2つめの要因です。
中国に生産拠点を持つ企業は日本のみならず世界各地に数多く存在するため、企業のサプライチェーンにおける中国の位置付けは非常に大きくなっています。
一方で、中国はゼロコロナ政策徹底のため、少人数でもコロナ陽性者が発生した場合都市単位でロックダウンを行なってきました。
そのため、中国工場の操業停止や物流の人員不足などが発生しており、需要に対する供給が追いつかない事態になり、モノの価格が上昇しています。
③ウクライナ侵攻
ロシアによるウクライナ侵攻も影響を与えています。
ロシアは世界的な産油国の一つですが、ウクライナ侵攻に伴う西側諸国の経済制裁に対する報復措置として、ロシアは西側諸国への天然ガス輸出を規制しています。
この影響をモロに受けたのはEU諸国です。
天然ガスの大部分をロシアに依存していたEUは、代替となる天然ガス輸入先を求めている一方、ロシアを除く天然ガス産出国の産出量には限りがあるため、結果天然ガスの市場価格が高騰しています。
日本もまた天然ガスの輸入大国であるため、価格高騰の煽りを受けています。
9. インフレはいつまで続くのか
個人的な見解では年末〜年度末まで継続し、徐々に0%近辺へ落ち着いていくと予想しています。
ポイントは2つあります。
①欧米各国の景気後退入り
インフレは日本よりも欧米諸国でより深刻になっています。
アメリカFRB(アメリカの中央銀行)及びユーロECB(EUの中央銀行)は、インフレ抑制のため政策金利を継続的に上げています。
政策金利上昇は金融引き締めに相当し、市場に出回るカネを抑制し景気の加熱を防ぐ効果があります。
今後も継続的な政策金利の引き上げを示唆していることから、年末頃から徐々に政策が効果を示して景気後退が鮮明になり、インフレも落ち着いてくるものと予想しています。
②円高ドル安への転換
足元では欧米諸国の政策金利引き上げが進んでいて、日本の政策金利(ゼロ〜マイナス金利)との金利差拡大が投資家の間で意識され、より高い利回りが見込める外貨を買い、円を売る動きから歴史的な円安水準となっています。
しかしながら、先ほど述べた通り政策金利の上昇の伴う欧米各国の景気後退が鮮明になるにつれ、政策金利引き上げが終了し、金融緩和方面へ転換していくと予想されます。
金利差縮小に伴って円を買い戻す動きが強まり、年末〜年始頃から円高に向かっていくのではないでしょうか。
円高により輸入物価が小さくなることから、年明け以降輸入物価下落に伴うインフレ抑制効果が出現すると考えられます。
まとめ
以上、日本の消費者物価指数の上昇の背景と今後の予想について解説しました。個人的な見解も多分に含まれておりますので、ご了承ください。
こちらの記事が皆さんの物価に対する理解に少しでもお役に立てれば幸いです。
それでは、さようなら。
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