こんにちは。masato(@masatoiphone1)です。
9月22日、11年ぶりに日本銀行による為替介入が行われました。円買い介入としては実に24年ぶりとなります。
9月22日20時現在、日本円は1ドル=142.49円となっています。2022年年初から、ドルに対して円は30円以上も下落しています。
今回は、歴史的な円安となっている為替レートの長期的な推移を見ていきたいと思います。
1945年〜 1ドル=360円の時代
戦後しばらくは、日本円は1ドル=360円の「固定相場制」でした。
固定相場制とは、各国政府間の合意によって為替レートを固定する制度のことです。
アメリカドルを世界の基軸通貨として為替相場を安定させることで、自由貿易を促し、速やかに戦後復興を実現することを目的としたものです。
この結果、日本をはじめとする西側諸国は史上稀に見る経済成長を実現しました。
日本では「高度経済成長」と呼ばれています。
1971年〜1973年 1ドル=308円の固定レート
1971年から1973年前半にかけて、日本円は1ドル=308円の固定相場制になりました。
大幅に円が切り上げられた背景には、1971年の「ニクソン・ショック」があります。
ニクソン・ショックとは、固定比率によるアメリカドルと金の兌換を停止するというものです。
戦後しばらく、「金1オンス=35アメリカドル」と定めることで、アメリカドルの信用力を裏付けていました。また、アメリカドルを金と交換可能な唯一の通貨と定めていました。このように金との交換を条件に通貨の価値を担保する体制を「金本位制」といいます。
アメリカドルと他国の通貨は固定レートとしていたから、他国通貨もドルを介していつでも金に交換することができました。こうして世界的に固定レートと金によるドルの価値担保によって通貨価値の安定を図っていたのです。
しかし、世界経済規模の拡大とともに用意しなければならない金の量が爆発的に増えていきました。耐えられなくなったアメリカは金兌換の一時停止を発表。
その後「金1オンス=38アメリカドル」として再出発を図った際、円レートは1ドル=308円に固定されました。この体制を「スミソニアン体制」と言います。
1973年〜 変動相場制に移行
しかしスミソニアン体制も長続きしませんでした。
金本位制をベースにした固定レート制は廃止。代わって1973年から「変動相場制」へと移行しました。
変動相場制とは
変動相場制とは、各国通貨の需要と供給をもとに通貨の価値が決まる制度です。従来のように各国政府の合意で通貨価値を決めるのではなく、通貨価値は市場に決めてもらおう、ということですね。
変動相場制移行後の日本円レート転換点
変動相場制に移行してから、日本円は一貫して円高方向に向かっていきます。
以下はアメリカドルに対しての円レートの長期推移をグラフにしたものです。
主要なレート変動を伴った時代を5つに絞って解説します。

①1985年 プラザ合意後の円高
1985年、先進5カ国(日本、アメリカ、フランス、イギリス、西ドイツ)によりドル高是正に合意しました。これを「プラザ合意」と呼んでいます。
当時、アメリカは双子の赤字(財政赤字と貿易赤字が同時に発生すること)に苦しめられており、特に対日貿易赤字が顕著でした。貿易赤字是正のため、円安ドル高方向へ誘導することで各国が合意したのです。
プラザ合意以降、急速に円高方向に突き進みます。プラザ合意直前までは1ドル=250円台でしたが、1980年代末には1ドル=120円台まで上昇します。この頃、日本はバブル経済真っ只中でした。
②バブル経済崩壊〜1995年 阪神淡路大震災直後の超円高
1990年代に入り、バブル経済が弾けて内需が低迷し、輸入が落ち込んでいきました。同時に企業による海外投資も落ち込む一方、輸出は依然として強かったため、ドルを売って円を買う動きが強く、1994年には初めて1ドル=100円を突破しました。
1995年1月、阪神淡路大震災が発生。近畿地方を中心に甚大な被害に見舞われました。
地震発生により、生命・損害保険会社や投資家が外貨資産を円に変えて震災による損失を埋めるのではないか、という憶測から投機的な円買いが発生し、1995年4月には1ドル=79円75銭と、1ドル=80円を突破しました。
③日本の金融危機による円安
1998年8月、日本円は1ドル=147円台まで下落しました。背景には、当時日本を襲っていた金融危機があります。
バブル崩壊以降、不良債権問題や金融機関の破綻が相次いでいましたが、1997年のアジア通貨危機をきっかけに日本の景気は著しく冷え込みました。こうした状況から通貨としての円に対する信用が下がり、円を売ってドルを買う動きが広がり、大幅な円安へとつながりました。
④リーマン・ショック〜東日本大震災による超円高
2008年、米国リーマン・ブラザーズ証券が破綻しました。これを発端に世界的な株価下落・金融危機が発生したことを「リーマン・ショック」と呼びます。
リーマン・ショックにより急速な円高が進行しました。2008年12月には1ドル=87円台まで上昇します。米国のサブプライムローン問題をきっかけにアメリカドルの信用が著しく下がる一方、長期的な貿易黒字によって積み上がった対外純資産を背景に信用力のあった円を買う動きが広がったためです。
さらに円高に拍車をかけたのが東日本大震災でした。東北太平洋側を中心に広範囲にわたって壊滅的な被害をもたらした震災により、生命保険会社・損害保険会社および投資家が外貨を売って円を確保するという憶測が広がり、2011年10月31日には1ドル=75円32銭の戦後最高値となりました。
阪神淡路大震災のときと同じように、震災によって為替レートが円高に変動したのです。
⑤アベノミクスによる円安
リーマン・ショック以降の長期にわたる円高は、安倍首相(当時)のインフレターゲットを定めた大胆な金融緩和(アベノミクス)により是正されます。
2013年にアベノミクスが表明されて以降、2019年にかけて円は1ドル=100円〜120円台で比較的安定して推移していきます。
2022年 超円安時代の到来
2022年に入り、コロナ禍のロックダウンから世界経済が正常化へと大きく舵を切りました。その中で円は大きく売られ、2022年9月には1ドル=145円台と24年ぶりの超円安となっています。
超円安の直接的な要因は、諸外国の政策金利引き上げです。
コロナ禍以降急速に経済の正常化が進み、需要が大きく伸びて供給が追いつかず、世界中で高インフレとなっています。アメリカ、EUをはじめとした各国の中央銀行は、政策金利を引き上げ、景気を引き締めることでインフレ抑制を目指しています。
一方でコロナ禍からの回復が遅れた日本は、引き続き超低金利の金融緩和を維持しています。
こうした金融政策の方向性の違いから、海外との金利差が意識され、円を売り外貨を購入する流れから大幅な円安となっています。
24年ぶりの円買い為替介入
2022年9月22日、24年ぶりに為替介入が行われました。円を買ってドルを売り、円の価値を高めることがねらいです。
日本経済は、バブル崩壊以降の超金融緩和時代を経てもなお成長力が弱く、金融緩和をやめるという選択肢がありません。
金融引き締めに動く諸外国とは異なり、今後も長期的に金融緩和を続けると予想されることから、円を売ってドルを買う動きは加速していました。
こうした著しい円安を食い止めるため、為替介入をおこなったものと考えられます。
為替介入直後、円は1ドル=140円台まで一気に円高が進みました。しかし効果は一時的で、今後も円安傾向に歯止めはかからないものと考えられます。
まとめ
以上、長期にわたる円レートの長期推移を見てきました。
この記事が少しでもみなさんの為替理解に役立てられれば幸いです。
それでは、さようなら。
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